動画「天」「ギリシア神話入門」③の内容にかんして、ご指摘を受けましたので一部内容の訂正をいたします。 2:10 ウラノスがガイアとの間に生まれた子供たちを「飲み込んだ」と言っていること。 これはたしかに間違いで、クロノスが子供たちを飲み込んでいるため、うっかり同じように言ってしまっています。視聴者のみなさんや動画作成スタッフを混乱させたことを、この場を借りてお詫びいたします。 ヘシオドス『神統記』157-158には 中務訳「大地（ガイア）の洞窟に隠し続け、光の中に出してやらず」 広川訳「大地の奥処（おくが）に隠してしまい、光（の世界）のなかに上がってこさせなかった」 とありますが、原文のΓαίης ἐν κευθμῶνιのエクトゥモーンは、ガイアの子宮（West）もしくは地下世界（LSJ）のことかと考えられます。前者だとすれば、その後のガイアの苦しみもより理解できます。 5:25 クロノスが飲み込んだ石をデルポイのオンパロスと同一視していること （１）クロノスはゼウスと間違って石を飲み込む （２）デルポイにオンパロス（世界の中心となる石）が置かれていた 両者を同じ石と考える人（ファンデンベルク『神託』和訳p.230「クロノスは二、三度激しくげっぷして、この堅い食物を吐き出した。ゼウスはのちに石をむつきからとり出し―これがオンパロス―パルナッソスの山の麓に置いた」）が多くいます。パウサニアスが『ギリシア案内記』の２か所で関連することを述べています。（２）（第10巻16, 3）オンパロスについて述べていますが、どこにあったのかを明確に述べていません。デルポイの奉納品の流れの中で述べていますが、デルポイ人の言説にふれ、ピンダロス（『ピュティア祝勝歌』）に言及するのみで、実際に彼が見たのかどうか明らかでありません。（１）（第10巻16, 3）ネオプトレモス神域の近くに小さな石があり、これについてクロノスが吐き出した石だという説もあるとしています（ἔστι δὲ καὶ δόξα）。話が神話上のことなので、パウサニアスの時代もそして現代も伝聞を述べるしかなく、石がいつどこで飲み込まれ、実際にパウサニアス山麓に置かれたのかどうかを確定することはもちろん不可能です。動画は同一とする説に基づいてのべさせて頂いております。 最後に、こういう機会をいただいたことについて、感謝いたします。（國方）