なんとも言えませんね。 ご指摘のような科学分野は、それぞれの分野の興味関心からの研究で統計的に有意な結果が出たものが論文としてアクセプトされて蓄積されていくのが基本なので、脳科学や心理学に普通の方々の今回のような質問に総合的に答えられる能力があるかどうかは全く別問題と思います。まっとうな心理学者と別にメディアでこういう類の問にどんどん答えていくタレント的学者や自分の狭義の分野を大きく超えて活動される脳科学者などいらっしゃいますが、これらの活動はなんら「科学的」ではありません。単に、そういう個人の方々の個人的才能を活かしたタレント活動です。「脳科学から答えるとこうなる」のではなく、脳科学者という肩書を持った頭の良い方が頭良さげに別分野のコメンテーターをしているに過ぎません。 例えば脳科学で、医学で病気を治すとかでなく、一般人に対して提言できる「より良い〇〇」って、脳をハードウェア的により効果的に動かすってことだと思いますが、そういう提言が本動画の問に対して持つ定量的インパクトは非常に小さいことも多いかと思います。 MBA で学んだときにへぇーと思った概念として、統計的有意性と対になるような概念として managerial significance というものがありました。科学分野の研究で統計的に有意であっても、定量的に例えば生産性が 0.01 ％くらいしか上昇しない研究結果であれば、実生活への応用は難しい みたいな感じです。 学問分野の都合から答えを作る書籍みたいなのではなくて、クライエントの問の視点から、様々な知的分野の洞察を総合的に組み合わせて答えを出せるのであれば、それ自体医学で言えば総合診療 general medicine みたいなものすごい能力だと思います。カズレーザーさんはなにも「意識的に」これまでの人生で遭遇した学問分野の洞察をまとめようと思っておられるわけではないと思いますが、これまでの読書歴、人生での経験などなどのレベルがそもそも非常に高く、なおかつこれらの経験を「直感的に」まとめるセンスがものすごいものと思いますね。そのセンスが凝縮しているのが「人生の意味」に対するコメントだと思います。仏教とか哲学とかのエッセンスがかなりつまった話を極めてわかりやすくされていると思います。哲学者や仏教のお坊さんであれば、それぞれの知的領域のディフェンスがそれぞれの方々の主目的になりがちなので、分野に囚われず、素直に日常用語の意味に対して自分なりの質の良い答えを出せるのは素晴らしいと思います。
