文:獅子方若連中 野原裕人
月が空にかかり、山々の襞から伸びてくるような夕闇の中で
街灯が一つ一つ灯り始めるころ、
一日の村回りを終えた獅子舞一行は獅子宿と呼ばれる家に向かう。
獅子宿までの道のりに現れる「ひょうげ役」は
男女一対の仮装をしており、陽気な仕草で道を清め、
獅子舞とそれを取り巻く人たちを非日常の祝祭的空間へ誘っていく。
いよいよ舞い込みの時が来た。
獅子は足音高く獅子宿の座敷に躍り上がる。
悪魔や邪気を払う勇壮な荒々しさと、
五穀豊穣、家内安全を祈る神々しさとともに。
十二演目、のべ一時間に及ぶ舞の終焉の瞬間、
その場に集ったすべての人々の歓びの声のなかには、
今年の祭礼も無事に終わったという安堵と達成感と共に、
祝祭の後の一抹の寂しい余韻が聴こえてくるようであった。
18 сен 2024