今回はソ連時代の一般的なロシア人の暮らしについてお話ししたいと思います。
ソビエト連邦は、1917年11月7日のロシア革命(十月革命)からロシア内戦を経て1922年12月30日に成立し、69年後の1991年12月25日に崩壊しました。今回お話しするのは、ブレジネフが指導者となった1964年から、エリツィンがゴルバチョフを追い落とす目的で企てた1991年12月25日のソ連崩壊までの、停滞しながらも安定していた期間の話です。
西側諸国には、ゴルバチョフがペレストロイカをやる前はロシア人はみんな不幸せだった、という先入観がありますが、ロシア人の多くは今でもソビエト連邦崩壊を残念がっている、というアンケート結果もあり、ロシアではゴルバチョフは全く人気がありません。共産党独裁から解放されて、自由を獲得したのに、”ソビエト連邦崩壊が残念”、というのは、我々には理解し難いところです。ロシア人も共産党独裁が終わった当時は熱狂していたのですが、その熱狂は長くは続きませんでした。
マルクスは「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」と言いましたが、ロシアの多くの人々にとって、ソビエト連邦崩壊前の現実は「殆ど働かずに、最低限の生活が保障される」でした。働かずに暮らしていけるのですから、ある意味、天国です。
人は、”必要に応じて受け取る”事が保障された瞬間に、能力に応じて働く事を止めてしまうのでしょう。マルクスは人に期待しすぎたのではないでしょうか。共産党独裁から解放されて、自由と一緒に自己責任の競争も来てしまったというのが、一般的なロシアの人々の実感のようです。
ユヴァル・ノア・ハラリは「サピエンス全史」で、私達の祖先は狩猟採集から農耕に移行して不幸になった、と言っています。ソビエト連邦の崩壊による共産党独裁からの解放というのも、これと似ている気がします。我々は「幸せになった筈」と思い込んでいますが、実際は不幸になってしまった、という事例です。
30 сен 2024