今日はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です(Shunsuke Sanadaさんからリクエスト頂きました)。今回はキリスト教の教義である三位一体説(正教では至聖三者説)に引き寄せて読みました。三位一体説とは、神の実体(本質、本體)は一つであり、神の位格(個位)は三つ。父なる神(神父)子なる神(イエス・キリスト、神子)聖霊(神聖神)という説です。それぞれの対応は以下。(女性陣はサブの属性も持っていますがそれに関してはいずれまた)
【子なる神】:感情:ドミートリイ(長男)、グルーシェニカ
【父なる神】:理性:イワン(次男)、フョードル(父)、カテリーナ
【聖霊】:霊感:アレクセイ(三男)、リーザ
言い換えれば、愛の実践によって神に到達しようとしたのがドミートリイ、理詰めでやったのがイワン、教えを信じ、説いて回ったのがアレクセイです。結局僕が言いたいのは、そこには優劣とか上下とか弁証法的発展の前後関係とかはないんじゃないかということです。少なくともドストエフスキーは自分が造形した三兄弟をみな等しく愛していたと思います。
イワンとフョードルを同じカテゴリに入れたのはイワンの台詞「ひょっとすると親父に一番似てるのは俺かもしれんな」を根拠にしています。フョードルは一見ふざけた道化で非理性的にも映りますが、あれは全部計算された合理的な振る舞いです。二人に共通するのは虚無を覗いた者特有の冷徹さです。
18 сен 2024