残月(ざんげつ)
磯辺の松に葉隠れて、沖の方へと入る月の、
光や夢の世を早う。覚めて真如の明らけき、
月の都に住むやらん。
今は伝てだに朧夜の、月日ばかりは廻り来て。
訳
月は磯辺の松に隠れて見えないが、沖の方にと次第に移ってゆく。早世した亡き人の一生は、儚い夢のようなものであった。しかし、人間は誰でも必ずや仏の世界に行くという理を悟ってみれば、個人は今は西方弥陀の浄土に住んでいることであろう。忌日ばかりは徒に廻ってくるがたよりは何もない。まことに哀悼の情にたえないものがある。
解説
[調弦]
三絃:本調子
箏:低平調子
[作曲]
峰崎勾当
[作詞]
不詳
[他]
本調子手事物。「シマ三つ物」「芸子三つ物」の一つ。
手事は五段からなり、チラシがつく。
初段と二段、三段と四段は同拍数で段合わせが可能。
箏の手は各地で様々あり、京残月、大阪残月などの区別がある。
6 окт 2024