#平家物語 

前に「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『耳なし芳一』の舞台は壇之浦の目の前の安徳天皇を祀った阿弥陀寺」書きましたが、もちろん芳一は盲目の琵琶法師、耳をむしり取って行ったのは平家の亡霊です。 「平家語り」「太平記読み」と形態は違いますが、この二つが日本人に与えた影響は計りしれません。 「奢れる者は久しからず。猛き者も遂には滅びぬ」という考えは日本人に深く取り入れられました。 その「驕る平家」ですが、 「平家にあらずんば人にあらず(正しくは「この一門にあらざらむ人はみな人非人なるべし」)」 と言ったのが清盛だと思っている人が案外多いのですが、実際は「平関白」時忠です。 清盛の平家とは別系統の高棟流(桓武平氏であることは同じ)で姉が清盛の妻となって、妹が、高倉天皇を産んでいます。 こういう傍流の人の方が居丈高になることはよくあります。

「徒然草」には 「東海に鰹という魚が棲んでいる。卑しい魚で昔は貴人の食卓に上がることはなかったが、世が乱れ近年ではちょくちょく上がるようになっている」 と書いてあります。 「鰹」はもちろん勝男=武士のことです。 動画にあるように。兼好は、たいした身分ではありませんでしたが、それでも武士をなこのように軽蔑していました。 後醍醐の周辺の貴族たちの武家を見る目がどのようなものだったかが見て取れます。 楠木正成の価値ある献策が無情に何度も退けられるはずです。 兼好法師は、塩冶判官の妻顔世御前に横恋慕した高師直の依頼で、顔世への艶文の代書を行い「忠臣蔵」に登場しています。 立派なことを述べていますが、出世や報酬には弱かったようです。 近年バレエに、「顔世御前」があります。 師直は湯上がりの顔世を覗き見て恋に落ちますが、バレエの方の衣装、動きはそんなものではありません。 舞台をそういう目で見てはいけませんが。 小松左京さんの「逆臣蔵」は師直が奇妙な夢を見ることから始まります。 「塩冶の遺臣どもが仇と狙ってくる」。 そこで主人公が「忠臣蔵」の話の内容とそれと元禄の赤穂藩士の討ち入りがなぜ繋がったか説明する趣向。 似た題名の井上ひさしさんの「不忠臣蔵」は元禄事件の話で、討ち入りに加わらなかった者や吉良方の人の銘名伝。 なお、高師直の「高」は名字ではなく「姓」です。 姓と名の間には「の」を入れて読みます。 「物部守屋」「蘇我入鹿」「中臣鎌足」「藤原道長」「平清盛」「源頼朝」みなそうです。 一方名字には「の」が付きません。 「北条時政」「足利尊氏」「楠木正成」「織田信長」「徳川家康」。 高師直は「高階」氏の出でそれを漢風に「こう」と読んでいる(「清原」氏を「清(せい)」氏と呼ぶように)ためです。 唯一の例外が姓を賜った豊臣氏ですが、なぜ「の」が入らなかったのか、よく分かっていません。