奈良美智は、日本の現代アート界を代表するアーティストのひとりです。
目を閉じた《東京の森の子》は、アンテナを天高く伸ばし、宇宙と交信しているようにも、森の精として自然界の平安を祈っている ようにも見えます。天空に向けて円錐状に立ち上がる本作は、2011年の東日本大震災の悲しみから、創造活動を再開する契機ともなった《ミス樅の子》(2012年)に続き、2016年以来、青森、那須塩原、ロサンゼルスなどに恒久設置されている《森の子》シリーズの8体目。都内に常設される奈良の野外彫刻としては初めてです。
粘土で作った原形をブロンズで鋳造し、ウレタン塗装を施した表面には、奈良の指跡が鮮やかに残り、作家の身体性や情動がリアルに伝わってきます。心の奥底に刻み込まれた記憶、感性、直感のままに制作されたこのシリーズには、奈良自身の葛藤、世界平和への願い、希望などが折り重なり、私たちの心の奥底に話しかけてくるようです。
29 окт 2024