パニック障害と過換気症候群は違うのでしょうか？両社は定義的な違いはあるのですが、実際指す内容はほぼ共通しており、過換気症候群は内科的疾患の除外に、パニック障害は抗うつ薬などでの治療に重きが置かれる印象を持ちます。
ご質問「パニック障害と過換気症候群は違いますか？」について、精神科医が4.5分で答えます。
出演：春日雄一郎（精神科医、医療法人社団Heart Station理事長）
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1. パニック障害とは
パニック障害は、急な心身の不調「パニック発作」の反復が特徴的な精神疾患です。約1-2％の人が罹患し、発症の平均年齢は20代と若く、女性に多いとされています。標準的な治療は、抗うつ薬SSRIの継続と、不安に慣らす「脱感作」を行うことです。
パニック発作
別名「自律神経発作」とも呼ばれ、交感神経の急な緊張により急な心身の不調が起こります。精神的には急な強い不安や緊張、恐怖心が強く出て、しばしば制御不能な実感をします。身体的には発作的な自律神経失調症の症状が出現し、動悸や吐き気など様々な身体の不調が急に強い形で現れます。
2. 換気症候群とは
換気症候群は、急に息苦しくなって呼吸が過剰になる、過呼吸が生じる状態です。強い不安や恐怖感、手のしびれなど体の症状を合併することがあります。強い息苦しさを自覚しますが、実際には酸素が足りている状況です。
3. パニック障害と換気症候群の違い
定義と視点の違い
パニック障害・パニック発作：精神疾患としての精神科的な定義
換気症候群：呼吸という現象の異常に着目した基本的な内科的な定義
精神面と身体面、どちらに重きを置くかなど、双方に視点の違いがあります。
4. パニック障害と換気症候群の共通点
指す内容は非常に共通点が多いです。例えば、「急な不安や緊張とともに過呼吸が発生した人」の場合、精神医学的にはパニック発作として、内科的には換気症候群として矛盾しません。同じ現象が起きた人に対して、パニック発作も換気症候群も両方該当する可能性があります。
実際は視点が違うだけで、指す内容や現象は事実上ほぼ共通しています。換気症候群の背景はほぼパニック発作であり、繰り返す過呼吸の多くはパニック障害と言えます。
5. 治療面での違い
換気症候群：内科的な視点から、体が原因の状態や他の体の原因がないかを重点的に調べます。
パニック障害：改善を要する精神疾患として、その治療に重きが置かれます。抗うつ薬SSRIを土台として、不安場面に慣らす「脱感作」を並行する標準治療を行います。
6. 換気症候群が反復する場合の対応
1. 換気症候群として、必要に応じて体の原因（肺の異常など）がないか調べ、除外します。
2. 精神科的な診察を受け、他の体の症状やパニック発作、予期不安などの基準を満たした場合、パニック障害と診断されます。
3. パニック障害と診断された場合、標準的な治療を行い、症状の改善と生活範囲の回復を図ります。
まとめ
パニック障害・パニック発作と換気症候群は似ている面が多いですが、定義と視点に違いがあります。換気症候群は内科的な視点で体の原因の除外が重視され、パニック障害は精神科的な視点で治療がより重視されます。換気症候群を繰り返す場合は、内科的な原因を除外した上で、精神科でパニック障害の診断を受け、適切な治療を行うことが重要です。
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【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医（精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医）
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。
21 окт 2024
