広島市は太田川が運んだ土砂で形成された三角州(デルタ)上にひろがる。市内に6つの大きな川が流れ70本を超える橋が架かる。交通の主役、広島電鉄(広電)も路線に7つの橋を持つ。いかにも「水の都」を走る路面電車だ。
JR広島駅前から路面電車に乗ると、すぐに被爆橋梁の荒神橋だ。原爆ドーム横の相生橋など次々に橋を渡り市中心部を行く。路面電車区間の終わりに近い新己斐橋は太田川放水路に架かる。280メートルと路線最長だ。車窓からの眺めは、立ち並ぶビルから広々とした風景に変わり、車窓から川を下る風が吹き込んだ。
広電は全国の路面電車でも最多の車両数を誇る。新型車両も多いが、他地域で長く活躍した移籍車両などの旧型車両も現役だ。
旧型が多いのは昭和40~50年代に京阪神の市電が全廃され、約80両が広電に譲渡されたことに由来する。広電では、今も20両が現役。車両を見て「懐かしい」という声も多く、観光客に人気だ。
新たな計画もある。令和7年にJR広島駅ビル2階への路面電車の乗り入れや、広島駅付近の路線の新設などが予定されている。20年間、運転士だった川中豊紀さんは「コロナからの復活とともに広島駅が新しくなり、みなさんに笑顔で乗っていただきたい」と期待していた。
新路線の開通で、広島駅前の橋を車とともに路面電車が走る姿が見られるようになるという。水の都の新たな風景が楽しみだ。
18 июл 2021