扉を開けるとくすんだ板張りの壁に剣や斧が並ぶ。鋲のついた鉄球や宝箱もある。
兵庫県高砂市のプラスチック加工会社「匠工芸」が展開する「タクミアーマリー」の店内だ。看板製造など本業の傍ら、コスプレや演劇などで使う武器などを制作している。
「剣づくりが自分を救ってくれた」と話すのは代表の折井匠さん(46)。
プラモデルの趣味が高じて、歳で東京のプラスチック加工会社に就職、歳で起業した。が、事業は軌道に乗らず、借金の返済に追われる。
厳しい日々の中、原点に戻り、「自分をワクワクさせるものを作りたい」と剣の制作を始めた。
デザインを考え、パソコンを使って図面を作成。0・01ミリ単位で素材を切り出し、透過フィルムを使って透明感を出したり、何種類もの塗料を重ねて金属の錆や鈍い光を再現する。
1つの作品の制作に1~4カ月かかるといい、価格は大きなもので万円を超える。それでも軽く精巧に作られた武器はポーズがとりやすいとコスプレーヤーからの信頼も厚い。
「剣を作ったら前向きな気持ちになれて仕事も入るようになった」という折井さん。現在はテーマパークの舞台美術の仕事などもこなす。海外での評価も上がり、目標はハリウッド映画で使われること。町工場から世界へ、挑戦は続く。
10 сен 2024