2019年9月8日@北日本新聞ホール（富山市）
東山洸雅ピアノリサイタル ～歌、詩情、情熱～
シューベルトの歌曲≪ます≫（D. 550）は1817年春に作曲され、1820年12月にウィーンで雑誌の付録として出版された。弾むようなピアノ伴奏に乗って、水の流れやきらめき、ますが生き生きと泳ぐ様子を表わすかのような軽快な主題が歌われる。詩はC. シューバルト（1739-1791）によるもので、「詩の主人公が小川の岸辺にたたずみ、ますが楽しそうに泳いでいるのを見ている。そこへ一人の釣り人がやって来るが、主人公は『水が澄んでいる限りますは捕まらないだろう』と呑気に構えている。しかしやがて釣り人がしびれを切らし、水をかき混ぜて濁らせると、哀れなますは捕まってしまい、主人公はただその様子を見ていることしか出来なかった」という内容である。釣り人の策略によってますが捕えられる場面では、曲調も劇的に変化する。
リスト（Franz Liszt、1811-1886）による≪ます≫のピアノ独奏用編曲は2種類存在するが、本日はその第2稿を演奏する（第1稿は≪シューベルトの6つの歌曲≫（S. 563）所収）。この編曲版は主にその伴奏音型に工夫が見られ、急速なパッセージや和音の追加、音域の拡大などによって華麗なコンサート・ピースに仕上がっている。また、前奏や間奏部分ではヴィルトゥオーゾ・ピアニストでもあったリストらしい、原曲の動機を自由に展開したカデンツァが挿入されている。
23 сен 2019
