かつて子供たちの娯楽として親しまれた街頭紙芝居を復活させた男性が津山市にいます。1枚1枚丁寧に作り上げる紙芝居。そこに秘められた思いを取材しました。
(先本廣司さん)
「大人も子供も、昔懐かし紙芝居だよ」
美作市の旅館「ゆのごう美春閣」に拍子木の音が響き渡ります。黒い自転車にハンチング帽。宿泊客を前に紙芝居を上演するのは、先本廣司さん71歳です。
この日上演した作品は、昭和30年代に一世を風靡したヒーロー物「黄金バット」。ストーリーに合わせて太鼓を鳴らす演出も当時を再現したものです。
(客は…)
「子供の頃が懐かしくて、感動した」
「アナログっぽいのが味があってよい」
(先本廣司さん)
「昭和30年代、僕たちの村にテレビが無い時に、(紙芝居は)子供たちの最大の喜びだった。紙芝居おじさんが小粋な格好をしていた。昔ながらのスタイルも再現しようと」
先本さんは、2021年津山市にある自宅近くの倉庫で紙芝居を作り始めました。1枚1枚、全て手描き。一つの作品を描き上げるのに1週間以上かかるといいます。
(先本廣司さん)
「ニスを塗って絵を保護している」
力強い線に立体感を表現する色使い。実は先本さん25年間、看板職人として活躍してきました。地元に伝わる昔話を題材にした紙芝居など、約15の作品を作り、小学校やイベントなどに出向き、活動しています。
(先本廣司さん)
「最初は、お年寄りが懐かしいと喜ぶと思った。やってみると子供がものすごく喜ぶ」
途絶えかけていた昭和の娯楽を復活させた先本さん。そこにはコロナ禍やインターネットの普及などにより、対面での交流が希薄になる子供たちに対するある思いがありました。
(先本廣司さん)
「コロナ禍とか、昔みたいに、おじいさんおばあさんと一緒に暮らしていない。相午の顔の反応、うそをついたらこの辺に出る。そういう微妙なやり取りが、じかの人間のつながり。リモートで人と合わない時代だけで、本当の人とのやりとりは、アナログの人との会話だと思う」
4 окт 2024