薩摩の馬踊りの習俗 

鹿児島県には，美しく飾った馬を三味線や鉦，太鼓の囃子に合わせて踊らせ，多数の踊り子がこれに続いて踊る「馬踊り」または「鈴掛け馬」と呼ばれる習俗が伝承されている。馬には，小さな俵に御幣や幟，造花，玩具の振り太鼓などを刺して飾った鞍を置き，胸に鈴を帯状に付けるのが伝統的な形である。この習俗は，霧島市隼人町にある鹿児島神宮の初午祭に奉納される鈴掛け馬踊りが県内各地に伝播したものといわれている。馬踊りは，馬の健康や多産祈願，農作物の豊穣祈願を目的とし，かつては各集落の長である名頭が農耕馬を牽いて代参していたが，厄年の男性たちが共同で奉納するようになり，現在は，厄祓いや歳祝い，豊作祈願，商売繁盛祈願などの目的で行われている。また，奉納者も，同齢集団や自治会、会社など多様化してきている