人形製作の地として約380年の歴史を持つ埼玉県鴻巣市で「鴻巣びっくりひな祭り」が行われている。今年で20周年を迎える祭りの目玉は高さ約7メートル、31段の巨大なピラミッド型ひな壇。開幕前日の15日にその制作風景を追った。
会場はJR鴻巣駅前の商業施設「エルミこうのす」内のイベントスペース。
朝7時過ぎにひな壇を上に載せるための土台が置かれ始め作業がスタートした。地元工務店の大工たちが寸分の狂いもないように正確に計測し、設置していく。間もなくトラックでひな壇の部材が到着すると、次々に店内へと搬入された。
商業施設の休館日を利用して、1日で完成させなくてはならないため、大工たちは脚立やロープを駆使し、ひな壇を手際よく組み上げていく。
13年ほど設置を担当しているという岡野工務店の岡野浩一社長は「倒れることが絶対ないよう慎重に確実に組み上げていかなくてはならない」と真剣な表情で作業を続けていた。
正午までにひな壇が完成。集まったボランティアの人たちが人形を箱から出し、ひな壇の各面に設置し始める。上部に置く人形は壇に登った大工たちが落下しないようにビスで止めながら設置していく。下からは「もう少し右に」「大きすぎるから違う人形を」などと調整の指示が飛ぶ。
7段飾りの並び順にのっとりながら、お内裏さまとおひなさま、三人官女や五人囃子、ぼんぼりなどの道具も含めて見栄えよくなるよう並べていく。
毎年参加しているボランティアの女性は「色味をそろえながら、大きさの異なる人形をどこに置くか考えるのが難しい」と話し、床で並び順を吟味した後にひな壇の上のスタッフに手渡していた。
作業は順調に進み、午後5時ごろまでに1550体の人形が整然と並び、壮大なひな壇が完成した。朝から夕方まで約80人が作業に携わり、華やかな光景が出現した。
ひな祭り実行委員会の中屋敷慎一委員長は「今年も素晴らしい形になった。一つ一つ表情が異なる人形をぜひ現地に見に来てほしい」と呼びかけている。
祭りは3月9日まで。エルミこうのすの他、鴻巣市内各所にひな人形が展示されている。
16 фев 2024