Tokyo Philharmonic Orchestra
Vladimir Fedoseyev
- Principal Guest Conductor(1996-2015)
I. Allegro moderato 0:00
II. Andante commodamente 16:00
III. Scherzo. Allegro non troppo 22:01
IV. Finale. Allegro moderato 28:43
2006 Jan 22, Orchard hall (Tokyo)
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ワシーリィ・セルゲーヴィッチ・カリンニコフへのオマージュ (2002年 某日)
私は今年31歳を迎える.「もし」という言葉も言いはばかれることを承知の上で,「もし私がワシーリィ・セルゲーヴィッチであったとしたら」あと3年の命ということになる.そして彼が病と貧しさの失意の中で,どのような気持ちで音楽を創っていたのだろうかと考えるとき,なんとも言葉にならない感情が沸き起こってくるのを抑えることができない.
彼は貧しかった.重い病に侵されていた.死への恐怖,いやもしかしたら安らかな死への渇望さえあったかもしれない.与えられたその過酷な生の中で,いったい何に希望を,そして安らぎを見出していたのだろうか.
一方,比べて私たちの生活は?着る物,食べるもの,住むところ......生きるに十分過ぎるほどの「もの」を享受していながら,何故か充足感を感じることが出来ない.そして,物質的快楽のさ中, それを失うことへの恐怖や不安,「もの」への依存.そんな中で,心への回帰を願いながら彼の音楽を聴いていると気付かされることは少なくない.
彼には「もの」は多くなかった.健康な体さえ与えられていなかった.すぐ傍には死が横たわっていた.しかし,ただ頭の中に響く音楽だけが,さん然と輝いていた.彼の音楽の中には一片の苦しみさえ感じることはない.
16 сен 2024