エンジンが駆動を続けるとエンジン本体の温度が上がっていきます、エンジンが高温になると歪みや破損の原因になるので、何らかの形で冷却する必要があります。
原動機付き自転車のように、走行風によりシリンダー外部に取り付けられた「冷却フィン」に外気があたることによって、エンジンを冷却する物を「自然空冷式」と言います。
小型発電機のように定位置で駆動している機械はエンジン動力で「冷却ファン」を常時駆動し、外気を冷却フィンにあてる事で冷却しています。これを「強制冷却式」と言います。
この機械は「水冷式」を採用しており、「空冷式」より冷却効率は高いですが、複雑になり部品点数も多くなります。
冷却装置は、エンジン各部の温度を適温に保つためのもので、一般的に水冷・加圧式が使われています。
ラジエータ、ウォータ・ポンプ、オイル・クーラー、ウォータ・ジャケット、サーモスタット、ラジエータ・キャップ、ファンなどで構成されています。車種によっては、オーバーヒート警報装置や水位警報装置を備えたものもあります。今回は冷却水、サーモスタット、ファンベルトを交換していきます。
まずは、ラジエーター・キャップを開けて圧力を抜きます。ここでは、ラジエーターを密封し、冷却水の熱膨張によって圧力を掛ける事で、水温が100℃以上になっても沸騰しないようにして、気泡の発生を抑え冷却効果を高めています。
不用意にキャップを開けると、中の冷却水が間欠泉のように吹き出し火傷する危険があるので、圧抜きバルブを押してから取り外すか、水温が下がってから取り外します。
ドレンプラグから「冷却水」を抜いていきます、本来は鮮やかな緑色ですが黒く劣化しています。冷却水は「水」と「不凍液」を混ぜた物が使われています、水だけを使用すると水温が0℃以下になった時に水が凍結して膨張します。その時シリンダや冷却水路の配管などが割れる原因になるので、不凍液を混ぜる事で凍結温度を下げています。
不凍液には色や種類が複数個あるので、機械に合った物を使用します。今回はLLCの緑色を使用します、凍結温度は不凍液が30%=-15℃、60%=-60℃になります。
それ以上不凍液の割合が増えると凍結温度は上昇していきます。
主成分のエチレン・グリコールの劣化や防錆添加剤の減少により、性能が下がっていくので2年間に1回のペースで冷却水を交換します。
ファンはラジエーター側から冷却空気を吸い込み、ラジエータを流れる冷却水を冷やすと共に、エンジン本体を冷却する働きもしています。ファンの駆動方法にはエンジンの動力を使用するタイプと電動モーター
を使用する物に分かれます。
タイミングベルトやファンベルトを使用して駆動するタイプで、ファン・クラッチはラジエーター通過後の空気温度によってファンの回転速度を制御し、ファンを必要以上に回さないようにしています。
電動モーターを使用しているタイプでは、サーモスイッチによって冷却水の温度を検出して、水温が高い時はファンを回転させ、低い時は停止する制御を行っています。
この機械はファン・クラッチは着いていないのでファンベルトで常に風を送り続けています。
冷却装置の冷却水は水温が低い時は、ウォータ・ポンプによってシリンダ及びシリンダ・ヘッドのウォーター・ジャケット内を循環しています。この時冷却水はバイパス通路を通って循環しています。
水温が高くなるとサーモスタットが開いて、サーモスタットのバイパス・バルブがバイパス通路を閉じます。この時冷却水はラジエータを通る過程で温度が下がって循環しています。
サーモスタットは冷却水の循環経路に設けられ、冷却水温度が低い時には、ラジエータへの水路を閉じて冷却水を早く適温にし、適温になった後はラジエータへ流れる冷却水の流量
を制御して、水温を調整しています。
ケースには小さなエア抜き口が設けられていて、ウォータ・ジャケット内のエア抜きを容易にしています。空気が無くなれば「ジグル・バルブ」がエア抜き口を塞ぎます。
サーモスタットは、一般的にペレット内にワックスと合成ゴムを封入した「ワックス・ペレット型」が使われています。冷却水温度が高くなると固体やったワックスが液体になって膨張し、合成ゴム
を圧縮します。スピンドルがケースに固定されているため、反力でペレットがスプリングを押し縮める方向に動くのでバルブが開きます。
冷却水温度が低くなるとワックスが個体となって収縮し、合成ゴムはもとの状態に戻り、ペレットはスプリングのばね力によって押し上げられてバルブが閉じます。
ここで大事なのは冷却装置はエンジンの温度を下げているのでは無く、適温にしているっていう所です。水温を下げすぎると「オーバークール」になって暖房が効かない状態になりますし、水温を上げすぎると
「オーバーヒート」になりエンジン不調の原因になります。
サーモスタットを取り外してみると開きっぱなしになっています、この状態では冷却水を常にラジエータへ送っているので「オーバークール」になります。オーバークールは機械が壊れる事は無いので別に良いんです
けど、気付かない間に「オーバーヒート」を起こす事が一番危険です、たまには水温の確認そする必要があります。
「水温センサ」はエンジンの冷却水温度を検出するもので、温度によって抵抗値が大きく変化するサーミスタを内蔵しています。水温が高くなると抵抗値が小さくなる「負特性サーミスタ」を使用します。
水温センサのカプラーを外した状態でテストします、水温が低い状態の時水温センサの抵抗値は大きく、水温計は一番低い状態を示しています。
水温センサのカプラーを短絡してテストします、水温が高くなれば抵抗値は小さくなり0に近づきます、この時水温計は一番高い状態を示しています。
水温センサは抵抗値の変化で水温を検出しています、水温計が無いような一部の重機は水温センサの抵抗値が0に近づくとオーバーヒートと判断し、強制的にエンジンを停止する制御をしています。
このように、「センサ」や「スイッチ」はエンジンが壊れる事がないよう電気的に管理し運転手に報告する働きをしています。エンジンオイルの潤滑にも似たような制御がされています。
エンジンをかけるとオイルポンプがエンジンオイルを吐出します、その時の圧力を検出するのが「オイルプレッシャスイッチ」です。ポンプが破損したり、エンジンオイルの量が少ない場合オイルポンプはエンジン
オイルを吐出する事が出来なくなります。
エンジンオイルが吐出圧力に達していない場合、オイルプレッシャスイッチは電源線をボデーアースへ落とします。すると運転手へ警告音と警告ランプでエンジンの異常を知らせます。
他にも燃料系統に水が混入した時に報告したり、作動油の温度が高温になると報告したり、車種によりますが様々な管理や制御を電気的に行っています。
特にバックホウは作動油を多く使用します、エンジンやミッションではオイルを冷却や減摩作用に使っていましたが、作動油はオイルを動力として使用します。
作動油は作動油タンクに貯蔵され、サクションフィルターを介してポンプに吸われます。
この機械は3個の油圧ポンプを使用しています。一番小さな油圧ポンプは「パイロットポンプ」です、ここでは低圧の油圧が吐出され「コントロールバルブ」などの制御油圧として使用します。
二番目に大きな「ギヤポンプ」は旋回、排土板、スイングシリンダーなどの小さな動力油圧として使用します。
一番大きな「アキシャルピストンポンプ」は回転斜板(かいてんしゃいた)を利用し、軸と垂直な時はピストンが上下する事なく油を吐出しません。斜板に角度をつける事でピストンの上下する範囲が大きくなり、多量の作動油を吐出する事が出来ます。
一つのポンプから油圧をとってしまうと同時操作をする時に作動油の圧力が分散され全体的な操作が遅くなります。
このようにポンプを役割によって分ける事でブームやアームを操作しながら旋回したり、走行しながら排土板を動かす時の操作性がなめらかになります。
アキシャルピストンポンプの斜板の角度は、パイロットポンプとギヤポンプの油圧の圧力差とスプリングのバネ力で調整します。
それぞれのポンプの出力軸や入力軸には、細い部分が設けられています、これは、ポンプの破損などにより回転が止まった時他の部品を破損する前に軸が破断し、動力の伝達を絶つ保護機工です
油圧ポンプから吐出された作動油は「油圧シリンダー」や「油圧モーター」へ送られます、この時の作動油の流量を制御しているのが「コントロールバルブ」です。ここではシリンダーなどの各アクチュエーターへ送られる作動油の量を「パイロット油圧」や「機械的制御」によって調整しています。
パイロットポンプで吐出された低い油圧は「パイロットバルブ」で流量を細かく制御しコントロールバルブへ送り、メインポンプで吐出された高圧な作動油を各アクチュエーターへ送る役割をしています。
パイロットバルブは「小さな油圧で大きな油圧の制御」をしています、パイロットバルブを数ミリ動かす繊細な動きがバケットの数センチの動きに変わっていきます。
エンジンオイルと同じように「エレメント」が装着されています、タンクの吸い口に着いている「サクションフィルター」、作動油の戻り口に着いている「リターンフィルター」、パイロット油圧用の「パイロットフィルター」、作動油が大気中に漏れるのを防ぐ「ブレザフィルタ」です。
リターンフィルターにはバイパスバルブが着けられており、フィルターが目詰まりを起こすとバルブが開きます。パイロット油圧はフィルター側では無く、油圧回路側にバイパスバルブが着けられています。
このように作動油の油圧回路は配管や油圧ホースで接続されていますが、回転する部分はホースなどで繋ぐと角度に限界があります。
昔のバックホウはそもそも旋回出来なかったそうです、旋回モーターとスイベルジョイントを使わない事でコスト削減していたかもしれません。バックホウは上部と下部に分かれていて、上の部分がぐるぐる回るので、走行モーターや排土板に油圧を送る回転接手が必要です、その接手が「スイベルジョイント」です。
スイベルジョイントでは8種類の油圧回路を繋いでいます、右走行モーターの行き戻り、左走行モーターの行き戻り、ブレードシリンダーの行き戻り、倍速制御用のパイロット油圧、油圧モータのドレン回路
です。油圧の強さが違うので配管の大きさも違います、走行モーター用は太く、ブレードシリンダ用は細めに作られています。
パイロット油圧はさらに細く、ドレン回路は油圧が最も低いのでホースバンドで固定され、省スペースに収まっています。
配管の向きの微調整が出来るように本締めはしません、本体のホースを接続してから配管接手の固定ナットを本締めします。
外側の「Oリング」をはめて内側の「バックアップリング」をはめます、内側のOリングは外側より大きな油圧がかかるのでバックアップリングでOリングの変形を防いで漏れ止めをサポートします。
「ピストン」は伸ばし方向と縮め方向の油圧を分ける部分で、ここが漏れるとシリンダーが動かなくなったり力が弱くなります。
「シールリング」と「リングスライド」で漏れを防いでいます、これも硬いので熱湯で柔らかくしてから装着します。装着した後は工具で矯正して形を整えます。
ブームシリンダーだけ、こういう部品が追加されています、これは「スライドリング」と「クッション」です。ブームを伸ばしきった時にこの部品が作動油の流れの抵抗になります、その結果ストロークエンド時の衝撃が緩和されます。これが無かったら、ブームを伸ばした時の衝撃で後ろへのけぞってしまいます。
25 авг 2022