この動画でご紹介するのはパリ近郊ブローニュ・ビヤンクール市に広大な庭を有するアルベール・カーン博物館です。5つの大陸をテーマにしたという庭はそれぞれの個性が際立ち、お天気の日に散歩するだけでも気持ちがよいです。特に日本庭園はやはり落ち着く~☆メトロで行ける場所に日本があるのです。これは行かなくてはなりませんよね。
庭園だけではなく、内部の展示も興味深いです。写真や映像に興味のある方なら尚更、面白いと思います。また今をときめく建築家 隈研吾さんによる新しい建物も一見の価値があります。
ここは銀行家で篤志家のアルベール・カーンという人の私邸だった場所です。1860年アルザスのマルムティエ村にユダヤ人として生まれ、若くして南アフリカの金山とダイヤモンド鉱山への投資で巨額の富を得ます。1898年、カーン銀行設立。その前年に「世界周遊奨学金制度」を創設し、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカ、ロシアなどの若者を世界周遊に旅立たせています。これは15か月間、なんのレポートなどの義務もなく、ただ好きな場所に赴き、世界を見聞してくる機会を与えたというもの。選ばれたエリートたちが異民族、異文化を知り、自国のためにあるいは世界のためにどんなにすばらしい経験を得たことだろうと思います。その後の「地球映像資料館プロジェクト」(1909~1931)もやはり、12名の代表による世界約50か国の映像記録を後世に残そうという計画です。そこにはカーンのグローバルなものの見方と人類のために役に立ちたいという懐の深さが感じられます。実はカーンは1929年の世界恐慌で没落してしまい、家屋や土地は没収され、後半生にはこの場所にかろうじて住むことだけは許されたということです。しかしこの方の人生をかけたプロジェクトが本当に素晴らしく、そのおかげで今わたしたちが数多の美しいオートクロームの写真や映像が観られるのだと思います。
この動画では企画展で展示されていたカーン自身の4カ月の世界旅行の映像を紹介しています。まだ日本の国内にまだ電車がない時代の旅行は船で移動というのが面白いと思いました。横浜、神戸などの港町が栄えた理由が分かります。
常設展は2000枚以上のオートクロームの複製写真が素晴らしく、一枚一枚にストーリーがあります。じっくり観ていたらいくら時間があっても足りません。そして昔の写真の色の美しいこと。写真を観ているときっと旅に出たくなるはずです。色んな人がいて色んな建築があって色んな風景がある、その当たり前に気づき、雄大な歴史の中でわたしたちはこの一コマなんだと思えます。日々の諍いや戦争が愚かしいと思えてきます。
どうぞ機会があれば訪れてみてください。
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30 окт 2024