<本の紹介>
2022/8/5
精神科医の本音 (SB新書) 益田 裕介
www.amazon.co.jp/dp/4815616221/
2022/8/22
精神科医がやっている聞き方・話し方 益田 裕介
www.amazon.co.jp/dp/4866801921/
00:00 OP
01:24 劣等感から解放されたとき
03:19 劣等感が拭えない人
03:50 劣等感は何のためにあるのか
06:13 生活保護
09:26 社会に出たことがないから怖い?
本日は「劣等感からの解放」というテーマでお話ししようと思います。
劣等感について語る患者さんというのは少なくないです。
うつ病や双極性障害のうつ状態、適応障害でうつ状態、そういう一時的な精神疲労から来る劣等感というのもありますが、それは病的な問題なのであまり治療的には扱いません。
薬物治療と休養によって回復していきます。
そうではなくて、生まれながらの劣等感だったり、社会で傷ついてきたり、失敗からくる劣等感だったり、そういう心理的な反応としての劣等感、個人のアイデンティティに絡みつくような劣等感については治療対象になります。
それは薬物治療ではなく、カウンセリング的なアプローチで治療していくので、どういう風に僕らがカウンセリング的にそこを癒していくのかをお話ししたいなと思います。
■劣等感から解放されたとき
・年齢
劣等感から解放されたときにどういうことが起きているのかを、自分の臨床経験から考えてみたときに、一つは「年齢を重ねた」というのがあります。
劣等感を感じやすい年齢、他人の目を気にする年齢があります。
25歳くらいまでと言われていたりします。
脳科学的にそれくらいの年齢の子たちは他人の目を意識しすぎると言ったりします。
それは脳の問題なのか、もうちょっと社会的な背景もあるかもしれません。
とにかく年齢を重ねるとあまり他人のことが気にならなくなってくるので、劣等感から解放されるということは、臨床的には知られています。
パーソナリティ障害の人たちも、30代、40代になってくると軽くなってくることは臨床的にわかっています。
すべての人じゃないにしても、軽くなっていくというのは臨床的には確認されています。
年齢は1つのファクターです。
・仕事、生活保護
仕事が安定するとか、生活保護が取れるという形でお金の心配がなくなってきたときに、劣等感を語ることが減ることもあります。
もちろん、生活保護の金額が少ない、減ってきているので困っていてなかなか、ということもあるのですが、生活保護や年金が出たときに、劣等感を語らなくなることは結構多いです。仕事もそうです。
・恋人
あとは恋人や家族です。
恋人ができることで劣等感から解放されていくこともよくわかっています。
これらのことで劣等感から解放されることが結構あります。
■劣等感が拭えない人
一方で、年齢を重ねたり、仕事を手に入れたり、恋人がいても劣等感から解放されない人もいます。
よくいるパターンとしては、過去にとらわれている人です。
過去の兄弟との争いや両親との葛藤から、なかなか劣等感が拭えない人もいます。
その場合は、過去のトラウマにアプローチをしていく必要があります。
■劣等感は何のためにあるのか
なぜ人間には劣等感が必要だったのか、劣等感というのが生まれながらに備わっているのか、ということを考えると、やはり両親からの愛情をしっかり受けなければいけない、兄弟に負けずに両親からの愛情を受けなければいけないという生存本能があるから、というのは考えられます。
両親から愛情を受けていないと、ご飯も食べられないし、死んでしまうわけです。
だから必死こいて両親からの愛情を受けなければいけないと人間はインプットされています。
そのインプットが大人になってからも抜けなかったりする。
子供の時に満足に与えられなかったからこそ、その時の恐怖感が残っていて、大人になってからも苦しんでいることが挙げられます。
年齢を重ねると、劣等感は何のためにあるのかというと、比較による自己認識です。
思春期以降、自分とは何か、自分は食べていけるのか、パートナーを手に入れることができるのか、ということを考えるわけです。動物として。
その時には比較対象があるので比較することで、自己認識していきます。
群れの中で自分は劣っているんじゃないかなどと思いながら、劣らないようにしようとどんどん鍛えていく。競争の中で自分自身を強くしていくという要素があるので、劣等感はそのためのスパイスになったりします。
生存権が脅かされたりしているときは、劣等感が刺激されているということなので、劣等感を克服するということは、生存率を高めることだったりします。
人間に昔からある本能的な訴えなんですね、劣等感というのは。
でも現代では必要ない本能だったりもするので、そこら辺はカウンセリングや治療的なアプローチの中で、その誤解を解いてあげる。本能という縛りを解いてあげることはとても重要です。
でも両親からの愛情の問題であれば、やはりトラウマのことを考えなければいけないかなと思います。
■生活保護
仕事を持っているとか、生活保護の人の話になりますが、生活保護を取ったときに劣等感から解放される人もいれば、解放されない人もいます。
その違いは何なのかというと、一つ考えられるのは社会というものへの理解の違いかなと思います。
臨床していてよく思うのは、解放されない人の場合は、周りの人にいろいろ言われていることが多いです。
家族や友人から「情けないやつだ」「お前はこのままでは餓死するぞ」「生活保護の金額はどんどん減っていくから、そうしたら餓死するんだ」「社会で生きているなら働くべきであって、働けない人間は要らないんだ」と言われたりします。
そういう暗示を受けているから自分でもそう思ってしまい、自分はダメなんじゃないかと思ったりするようです。
情けないやつということはありません。
病気や障害があるわけだから情けなくはないし、社会において働くべきと言っていますが、そんなことはありません。
働くべきとは誰も言っていないわけです。
餓死するかもしれないと言いますが、餓死の問題は過去の産物であって現代の日本においては解決しています。食糧は余っていますから基本的には大丈夫です。
そういうことを言うとよく言われるのは、これから戦争が起きたらどうするんですかとか、人類が増えすぎて食物がなくなるかもしれないじゃないですかといったことです。
でももしそんなことになったら、僕も変わりませんよ、状況は。
その時には仕方ないかもしれないれけど、そんなことはほぼ起きませんから気にしなくてもいいんじゃないかなと思います。
結局人間の本能というか、昔ながらの習慣に囚われているのだと思いますね。
もう一個反論をすると、社会学者や経済学者が言うように、人間は消費してくれるだけで十分だったりします。
このRU-vidもそうですが、消費してくれる、知ってくれているだけで十分社会参加してくれているということです。
働くことも大事ですが、それ以上に消費するということはとても重要です。
物を買ってくれる、物を食べてくれる、コンテンツを消費してくれることが重要だったりするので、あまりそこに優劣はなかったりします。
ここの認識は難しいし、この証明というのは僕もできないのですが、体感的にはすごくよくわかります。
ですから、あまりそういう古い考え方にとらわれる必要はないんじゃないかなと思います。
とにかく社会というものをもう少し正確に理解することによって、劣等感からは解放されるような気がします。
■社会に出たことがないから怖い?
社会へ出たことがないから怖いというパターンもあります。
社会にちょっと出たことがあるけれど、失敗してしまって怖かった。
失敗してしまって、自分はダメなんだと思ってしまったということもあります。
それでひきこもってしまう。
劣等感とひきこもり状態で苦しんでいることもあります。
ただ、そもそも社会が怖いのか、他者が怖いのか、ということがすごく曖昧だったりします。
他者というのも相手が悪かったのか、こちらの問題だったのか、実際どういうことが起きたのかがすごく曖昧なことが多かったりします。
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一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 www.medsi.co.jp/products/deta...
倫理規定について note.com/mentalyoutubers/n/nb...
【コメントについて】
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2 авг 2024