扨又、信長記ヲ見ルに、イツハリ多シ。三ケ一は有事なり。三ケ一者、似タル事モ有。三ケ一ハ無2跡形モ1事なり。信長記作タル者、我々がヒイキノ者ヲ、我ガ智恵之有儘に、能作タルト見えタリ。其故ハ、処々にての勝負之事ヲ書付ケルに、先偽ト見えケルハ、其比十、十一、十二三に成、西モ東モ知ラザル者ガ、成人シテハルカ後に元眼(服)シテ男に成て有間、昔物語に聞キシ者ヲ、ソンヂヤウソコにて走(リ)廻リ、比類無高名ナドゝ書て、偽ヲ作タル事モ多シ。長間(篠)ナドノ陣にモ、せザル高名ヲ相打にシタルト云処モ有。武者遣ナドモ、一代遣イタル事モ無人ヲ、武者ヲ遣イタルト書れ有。此外、此場にて之事にモ、偽多シ。度々にヲイテ引ケヲ取、人に後指サゝレタル者ヲ、鬼神之様に書タルモ有。又ハ度々の高名ヲシテ、所(諸)国にて隠レ無覚之者ヲ書カザルモ有。力ノ無者ヲ大力ト書タルガ、皆偽なり。大力ト書タル内に、独力持タル衆ハ、一人モ無。結句、力ハ無シテガイスなる衆多キに、色々か様に書申事ハ、思えバ、我ガ目ヲ被レ懸タル衆之事ヲ、形モ無事ヲモ作タルト見えタリ。然時ンバ、書者に智恵有て、無2智恵1に似。然間、信長記にハ偽多シト沙(汰)シタリ。
8 сен 2024