番組名不明(レコード大賞受賞曲を振り返る番組だったようです)
「喝采」は、ちあきなおみさんの13枚目のシングルです。(1972年9月10日発売)
この曲は発売から翌年にかけてオリコン集計で80万枚を売り上げ、累計では130万枚(日本コロムビア調べ)の大ヒットとなりました。
ちあきさんは1972年の日本レコード大賞・大賞を受賞しましたが、発売されてから3ヶ月でのレコード大賞受賞は史上最短記録だそうです。
ちあきさんがレコード大賞を受賞した1972年は、上半期のヒット曲で日本歌謡大賞を受賞した小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」が当初は大賞の最有力候補でした。私も発表の瞬間までルミ子さんが大賞だろうと思っていて、ちあきさんが選ばれた時とても驚いたことを覚えています。
「瀬戸の花嫁」の売上が通算69.5万枚ですから、翌年にかけて80万枚・通算130万枚を売り上げた「喝采」とは、年末時点では本当にいい勝負だったのでしょう。
小学生だった当時の私が見ても、この曲はレコード大賞を受賞して売上に拍車がかかったという印象がありました。でもこれだけの名曲です。今となれば納得の受賞だったなと思えます。
実際に「喝采」が発売された際、審査員の一人が作曲者の中村泰士氏に対して「もう決めていたのに、悩ましい曲を書かないでよ」と言ったというエピソードも残っているそうです。
亡くなってしまった恋人を思いつつステージで歌っているという設定のこの曲は、続けて発売されたちあきさんのシングル「劇場」、「夜間飛行」と併せて「ドラマチック歌謡三部作」とも言われています。
どれも素晴らしい楽曲です。
子供の頃は、まばたきしない歌い方が怖いwとか表面的なことしか見えていませんでしたが、大人になるにつれてちあきさんの歌や声や表現力がどれだけ素晴らしいものなのか、わかるようになりました。本当に天才的な歌い手です。
ちあきさんは1992年9月に最愛の夫、郷鍈治さん(俳優 宍戸錠さんの実弟でちあきさんの事務所の社長兼マネージャー・プロデューサー)を亡くして以来、芸能活動から身を引いてしまいました。
これだけの歌い手ですから彼女の復帰への期待は根強いものがあり、ベスト盤などのCDのリリースや特集番組が放送されるたびに活動再開を待望する声も上がるのですが、亡夫から「もう無理して歌うことはない」という遺言があったとされ、本人も歌手復帰を期待する声や音楽関係者の説得に応じていないということです。
夫の郷さんが荼毘に付される際、ちあきさんが柩にしがみつきながら「私も一緒に焼いて」と号泣したというエピソードも残っていることから、最愛のパートナーを亡くして彼女は歌う意味がわからなくなり、歌手を続けることができなくなってしまったのかもしれません。
もしも彼女がそのまま歌い続けていたら、まさに彼女が「喝采」の主人公になってしまいます。この曲はちあきさんにとって最大のヒット曲であり代表曲ですが、亡き旦那様への想いが強ければ強いほど、彼女はこの歌は(この歌だけは)歌えないでしょうね…。
彼女の才能を思うととても残念なのですが、ひとりの人間としての心情を思うと、復帰しない彼女の思いも理解できてしまいます。
でもでも…それでも、もしもこの素晴らしい声が健在であるのなら、私たちにまた歌をうたって聴かせてほしい。そう願わずにはいられません。
5 окт 2024