水銀は、古くから金メッキや体温計、蛍光灯などに用いられる有用な金属である一方、高い毒性を持ち、日本では1950年代に水俣病が発生しました。日本では水銀被害の経験を踏まえて対策が進む一方、世界では零細・小規模金採掘(ASGM)や産業からの人為的排出による健康影響が懸念される状況にあり、人の健康および環境を保護することを目的とした水俣条約が2013年に採択され、2017年に発効しています。環境再生保全機構(ERCA)が主催した本セッションでは、同条約下で講じられてきた対策による成果と課題を中心に講演とパネルディスカッションを行いました。高岡昌輝氏は、水銀排出量や水銀によるリスクについて将来シナリオを元に推移を示しました。そして、不断の改善努力を行うことで、水俣条約の実効性が上がっていくとしました。中島謙一氏は、対策に伴う副次的影響に着目し、例として、脱炭素対策やASGMでの水銀対策に目を向けました。シナリオ分析を通じて、対策ごとの便益とトレードオフを見極めることや、対策コストを考慮して施策を立てる必要性に言及しました。中澤暦氏は、パッシブサンプラーを用いてインドネシアのASGM現場で試みた大気中の水銀濃度の観測結果について報告しました。
31 мар 2024